※大喜利元ネタ
■最後の人(1924)
『死ぬまでに観たい映画1001本』より、48本目。
以下、ネタバレ備忘録。
ホテルのドア係として誇りを持っていた老人が、その任を解かれ没落していく、という話。
これはひとえに見栄の話。
ホテルのドア係としてアパートの近所の人から敬意を持たれていたのだけど、それがトイレ係に変わったからと言ってその人たちは噂をし始める。
その噂をしている人たちの卑しく嬉々とした顔が、現代にも当てはまって、怖いよね。
しかも、その噂のタネを振りまいてしまったのが、その老人の妻。
夫である老人がホテルのトイレ係に帰られたのを知って驚いて帰ってくるその様は、能の「そろりそろり」を1.5倍速にしたような感じだったのである。
そんか帰宅の仕方をしたら、普段何の刺激もないアパートの住人たちは、聞き耳を立て始める。
そして、立派だった老人が、トイレ係に変わったことを、邪気伴う笑顔で周りに知らせていく。
その辺で作業をしている人はもとより、2、3棟離れたアパートの窓から顔を出した人にも窓to窓にて大声を出して、その笑い話を伝えていくんだわ。
また無声映画時代の早回しが効いていて、その伝達速度の速さが余計に感じられてね。
側から見ると、見てらんないけど、これも人に習性の誇張だなあ。
その後、老人は家に帰っていくんだけど、家族みんな冷たい。
妻はゴミを見るような目つきで老人を見て、娘は泣きじゃくり。
娘婿なんて、帰ってきた老人を顎使ってこっちの部屋来い、の指示するし、入ったら他の誰かが見てないかしっかり見回す始末。
これ、
「せめて妻はかばってやれよ!長年連れ添った旦那だろうよ!それより自分達が笑われるのがとにかく耐えられないのか・・・」
と、心ツッコミ。
時代と文化が違うからね。。
それで、この映画の面白いところがここからあって。
ここから監督のテロップが出て。
この老人は、普通なら孤独は死を待つだけ、というただただかわいそうな現実から、この先あり得ないことを用意した、という内容でね。
死を見とった者にその財産を全て譲る、という大富豪の死を、その老人が看取って。
それで、老人、いきなり大金持ち。
優しくしてくれたホテルの警備員も誘って、贅沢な食事をするシーンへ移行。
豪華な料理の皿を重ねまくって、葉巻もバカバカ。
トイレ係にも今持ってるだけのコインをポケットに詰め込んだりして。
最後は自分の笛でバスを呼び止め、ホテルの者たちにチップを払い、その辺の男も馬車に乗せて、フィニッシュ。
絶望からの良かったね話に。
映画だから、普通に老人が悲しい思いをする話だけじゃみんな観たいとは思わないからね。
これもまた、似た状況の人への救いになるんですよね。
現実は、違う形で解決しなくちゃだけど。
製作国
ドイツ
監督
出演
マリー・デルシャフト