思ってもみないことばかり。

「ほめる、認める、肯定する。」をモットーに、何もないおっさんになった自分が大喜利や日々のことを書きつづることこで変化していくさまを記録するブログ

『注射』

注射は痛いし、怖い。これは常識である。
そうなると、「俺は注射なんか怖くないぞ」というやつが現れ、そいつはいつしか注射好きになり、注射好きという自分にアイデンティティを持ち、そのうち看護師になって世の中に貢献するか、あるいはなんかただでさえ危ないやつがそのアイデンティティがゆえに、そのままそっちに一直線、になり、消息が不明になってしまうことになるのである。

だが、そのうち注射器も進化して、今まで最初にやっていた『脱脂綿で血管をこする』ということをするだけでにんにく成分が血液に混ざり合い、40℃の熱で寝たきりだったのがパッチワークキルトができるくらいになるはずだ。
そんな『注入脱脂綿』の時代が到来すると、糖尿病の人も、歯医者の麻酔も、顔面に美容成分を注入する人も、みんな今までの痛みの代わりに、ニッコリできるのである。

しかし、負の面もある。
看護師の注射の上手い下手も、関係なくなり、インターネットが流行る前の知恵袋的な爺さんのごとく、技術があるという誇りがまた一つ、失われる。
それはいつしか、以前注射を打っていた人と注射を痛がらずに打たれるのがアイデンティティの人で、国家が黙認する治外法権の村が作られていくことだろう。
その注射の中身は果たしてニンニクなのか、はたまたそれにしか縋れなかったものの極楽浄土行きの切符か。
そんな道に行かないよう、適切な恐怖を注射を打たれて泣いたり叫んだりしながら、喧伝して行こうと思った次第である。