家に誰かがやってきたようで、手土産のドーナツが家に置いてあった。
ドーナツを個人的に買うことは殆どないが、食べたら食べたで中に入ったクリームやチョココーティングで殊のほか旨い。
しかし、問題はその「モサモサした感じ」である。
美味いものを食べると死ぬ確率が上がるというが、コレはそのまま窒息死の危険性があり、なにかの蓄積で殺そうというわけではなく、ステップを踏まずダイレクトに殺そうとしてくる。銀のエンゼルではなく、金のエンゼルのようだ。
しかし、そこはドーナツを作った人はきちんと考えていてくれて、真ん中に穴を空けて息継ぎポイントを設けていてくれる。
この優しさ、人を救おうとする気持ちが、全世界でその名を轟かせた理由だろう。
また、手を使わずパンで口が埋まってしまうパン食い競走でも、窒息死の可能性を払拭するために、ドーナツ食い競争にするのがよろしい。
また、好きなものをプールいっぱいに埋め尽くすのが夢である人は多いと思うが、もしドーナツで埋め尽くすなら穴が開いてることがその夢をかなえた人一人の命を救うかもしれない。
自分がプールの底にいるときにドーナツが穴の部分が口に位置しそのまま穴を塞がないならば何十個縦に積まれても、窒息死のリスクが減るはずだからだ。
「夢の食べ物があんまんじゃなくて、ドーナツで良かった」
そんな声を、ドーナツの創造主は空の上で聞きたがっていることだろう。
おやつにもこんなセーフティネットのあるのだから、電車の中のそこかしこにトイレがあったりだとか、パソコン作業の仕事には一時間おきに専属のヘッドマッサージ師による施術だとか、パイロットや運転手の仕事の合間に一曲熱唱タイムだとか、そういった『ドーナツの穴』が世の中にもっと増えることを期待したい。